美狂乱 Studio Album(1)


1981年作

キングレコード音羽スタジオ内で校正段階のジャケットを見た時、紆余曲折を経てようやく生み出された事に対してちょっと感動。高見氏のデザインしたLogoやジャケットのシンプルな平面構成も大変気に入ったし、北村・山崎両氏のライナーノーツにもえらく感激したものだった。

 実際のレコーディング時、「警告」の中間パーカッションの部分は地元スタジオで録音したオープンリールを差し込んだ形になったが、実は今でもその部分の処理が気持ちの上で少々引っかかっている。
それは、イーノのLP「ディスクリート・ミュージック」の裏ジャケに載っていたダイヤグラム(フリッパートロニクスの原型)を参考に独自に組み立てたデバイスがあり、ステージで何度か使用していてかなりくたびれた状態だった。
このデバイスをギターではなくパーカッションに応用しようとマイク数本を立てたミキサーから信号を送ったが、録音レベルが思うように上がらず四苦八苦し結局断念。妥協点を探して録音したという経緯があったからだ。
本当ならそれ単体でも通用するような、起承転結を持った素材を準備する予定だったのだが...。

ここでLPレコードに同封された故・北村昌士氏のライナーノーツの前半部分を引用しておきます。82年当時の音楽シーンにおける美狂乱の位置づけを的確に言い表した文章として、私は高く共感しています。

1982年作

このジャケットをデザインしてくれた望月ヒロミ氏は一風変わった女性だった。初代美狂乱のコンサートなどによく顔を出していた彼女はヒッピーというより乞食に近い風貌が強烈だった。話した事はなかったが数年後、私の友人と結婚した事で親しくなりジャケットデザインの話を持っていった。彼女はその後渡米しメイキャップ・アーティストとしてニューヨークで活躍している。

 このジャケット下半分を占める鉄屑は沼津の港湾に山と積まれたゴミだ。彼女はそれをモノクロで撮り、ポジやコピーを切り貼りしながら無造作に水面のように見える材質のアクリル板に並べていった。吊り下げられている人形は宝物の比喩。ゴミの世界から引き上げられた宝石という意味だ。 
 組曲「乱」の b)クラクションの録音時、トランペットの岡野等氏は私の書いた汚い譜面に四苦八苦していた。おまけに変則拍子とあって気が狂いそうになっていた。しかし、その動物的なカンによってそれ程の時間をかけずに終了させた。さすがプロフェッショナル。だけど二度と美狂乱には参加してくれないだろうなあ...。

全ての録音を終えてミックスダウン編集の時、d)グレイト・パララックスとe)エピローグの結びつかせ方で明け方まで議論を重ねた。
私としては、そのままテープをバッサリとカットしてエピローグへ突入するのは常套手段のようで嫌だった。結局高見氏のアイデアで、無作為に選んだ数秒間の演奏を逆回転させてエピローグの直前に貼付けるというものだった。
まぁ、巧くエピローグの時計の音に絡んだと思う。

2004年作

「クロマティ高校」本編に使用したSoundTrackCD vol.1。
この時期はとにかく細かい曲を多数書いた。こういう経験は初めてだが、目から鱗が落ちたというか、新鮮な作業でとても充実した時間を費やせたのだった。
映像とのコラボレーションは昔から興味がありアニメとはいえ、こういう形で実現できた事は素直にうれしい。妙にマッチしたサウンドと絵の一体感に桜井監督の感性の鋭さを感じる。

単行本も全巻(この時点では7巻)読ませてもらったが、吹き出しセリフが異常に多いし言い訳がましくて大変良いのだ!